December 9
「そういえば、あるよ」
Sさんがだしぬけに言った。そして冷蔵庫からおもむろにストロングゼロを出したのだ。
「飲んだことない?」
「あるわけないでしょ」
「ちょっと、やってみる?」
「本物?」
「もちろん」
Sさんが俺に缶を渡す。きんきんに冷えている。500mlのロング缶。どこからどうみてもストロングゼロだった。実物を見るのは初めてだった。俺にとってストロングゼロは文学の中にしか存在しない酒だった。Sさんが語りだす。
「ストロングゼロってのはね、平成の終わりに咲いた徒花みたいなものだと思うんだ。信じられないかもしれないけど、当時はどこでもいくらでも手に入ったよ。そこらじゅうのコンビニで山ほど売られてた。それが当たり前だった。特に疑問も感じてなかったな。
年号が変わってもまだしばらくは合法だった。みんな当たり前にストロングゼロを飲んでた。やっぱり東京オリンピックが良くなかったね。あれが致命的だった。あれのせいでストロングゼロの存在が世界中に知れ渡ってしまったんだ。ヘブンズドリンクなんて呼ばれるようになったのは、2020年以降のことだよ。
僕はね、今年の初めに北海道から逃げてきたんだ。今の北海道はひどいよ。名目上はロシアと北朝鮮が共同で統治してるということになってるけど、実態はちがう。内戦状態だよ。ロシアと北朝鮮と道民の三つ巴さ。僕ら道民はほぼ壊滅状態。そんなこと、こっちのマスコミは一切報道しないけどね。まあひどいもんさ。だから僕は命からがら逃げてきたんだ。
君は東京でできた初めての友人だ。だからこのストロングゼロを友情の証しとしてプレゼントする。めったに手に入らない代物だよ。密造酒ではないよ。そう単純な話ではないんだ。いま、闇で出回ってるストロングゼロはすべて平成末期に造られたものなんだ。それを保存する施設が札幌にあって….
ごめん、これ以上は言えない。なんだか今日は喋りすぎてる。だいぶ酔ってるみたいだ。まあ飲んでくれよ。正真正銘、本物のストロングゼロだぜ」
Sさんがプルトップを開けてくれた。俺は一口飲んだ。舌全体に甘美な絶望が広がった。
2026年 冬
(Source: ForGIFs.com, via theemitter)
(Source: ak47)
雄山「では聞こう。コーヒーの定義とはなんだ?」
面接官「えっ?」
雄山「コーヒーを回収するためにはまずコーヒーの定義を明確にする必要がある。
回収する方法を聞いたからにはまずそれを答えてもらおう。」
雄山「まず第一にコーヒーとは何か?」
面接官「そ、それはコーヒー豆を使った飲み物のことでしょう。」
雄山「ほう。ならば聞こう。ブラックコーヒー、カプチーノ、ミルクコーヒー・・・
コーヒーだけでも今や星の数ほどの種類があり、大衆はそれをコーヒーであるとして飲んでいる。
様々な物を混ぜ、本来の豆の味と全くかけ離れたようなものでもコーヒーであると果たして言えるのか?」
面接官「そ、それもコーヒーであると言えるでしょう。飲み方が多様化してはいますが、みんなコーヒーが好きなんです。」
雄山「ならば改めて問おう。貴様の言うプールに入れたコーヒーは、コーヒーとプールの水とが混ざり、
超薄味のプールサイズのコーヒーが出来上がったとすればコーヒーを回収できるのではないか?」
面接官「!!・・・!!」
雄山「貴様は言ったな。本来の豆の味とかけ離れてもコーヒー豆を使ってさえいればコーヒーであると。
ならば、プールとコーヒーのオリジナルブレンドが出来上がっていないと言えるのか?」
面接官「!!・・・うぐぐ・・・」
雄山「・・・答えられんか・・・ふん、最近この会社が評判なので面接に来てみれば・・・
自分の出した質問の真髄もわかっていないとはな・・・」





